寵愛の姫 Ⅰ【完】



「あの、叶様。」


「……。」


「私、愛美って言います。」


「……。」


「…その、今夜、暇ですか?」




計算された上目遣いで俺を見上げる女。


「……。」



うるんだ瞳で俺を見上げる女の脇を、返事を返す事なく無言ですり抜ける。



「……あっ、叶様」



甘ったるい香水の匂いと、残念そうな女の癇に障る声を背に、歩みを進めた。
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