寵愛の姫 Ⅰ【完】



「今晩は」


定例の莉茉の挨拶。




莉茉の声に、先程までの俺の中にあった女への苛立ちが消えた。




最初は警戒してか、身体を強張らせていた莉茉。




それも次第に和らいだのかのように、今ではその表情を少しだけ緩ませる。



「…あぁ、」



そんな莉茉の挨拶に、軽く相槌を返した俺は、何時ものように煙草に火を付けた。
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