寵愛の姫 Ⅰ【完】



そろり。


そろり。




ゆっくりと歩き足音を忍ばせる。




この家では煩くする事は、私には許されていないから……。



「……。」



静かに足音を立てないよう階段を降りれば、リビングで小さな話し声。




今日はお父さんも休みのはずだから、私以外の家族全員が揃っているはずだ。



「っ、」


ばくばくとなる心臓。



―――どうか、誰にも見付かりませんように……。
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