寵愛の姫 Ⅰ【完】



どくどくと心臓が鳴る。


ガクガク震えそうになる足を必死に持ち堪え、玄関のドアを握る手に力を込めた。



「っ、もう行くね!」


茉莉からの視線から背を向け、玄関を押し開ける。


「…行ってきます…。」


「……。」


ーーーパタン。



…………ドアが閉まっても、茉莉からの声は聞こえなかった。
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