Dilemma
そうこうしている間に、先生が出席を取り始めた。
「相澤さん」
「はい」
「伊藤さん」
「はーい」
「遠藤さん」
「はい」
そして、それは起こってしまった。
「沖田さん」
返事がなかった。
「あら?沖田さん?お休み?」
途端にクラス中がざわつき始めた。
それもその筈。
だって…
「おい、愛梨」
ふいに斜め後ろに座っている志暢に声をかけられる。
「沖田ってどんな奴だ?」
「知らないよ…」
「知らない…ってお前昨日始業式出たんだろ?見たんじゃねーのか?」
「……………」
「なんだよ」
「えーと…」
愛梨は至極言いずらそうに視線を逸らす。
「志暢と同じで…昨日遅刻してたらしくて」
どういうことだそれ、と志暢は言葉を発しようとしたが、それは叶わなかった。
なぜなら
ガッシャンッ
「きゃああああ!!」
突然、窓際の窓ガラスが割れ、近くに座っていた女子生徒が悲鳴をあげながら飛び退いたのだ。
瞬間、割れた窓から一人の女子生徒が入ってくるのを愛梨は見た。
「ちょっ…」
女子生徒はうっすらと笑いながら志暢の顔を机に叩きつけた。
バアンッ
豪快な音がする。
「し…志暢!」