Dilemma
「これは一体どういうつもりかな?マブダチよ。」


小石がかすった頬をさすりながら、志暢は一歩踏み出した。


「どういうつもりも何もないさ。あっしらは知ってるんだぜ?あんたが政府の回し者だってことをさ。」


「…回し者?」

志暢はコキッと首を鳴らす。


「あぁそうさ!あんたと駅前で会ったときにあっしは確信したんだ。しらばっくれてないで白状したらどうだい?」


「いや白状しろと言われても…」

そもそも回し者でもない。
しかし、ここはカマをかけてみてもいいかもしれない。


「…ふっついにバレてしまったか。」


「えっマジ!マジなの!?」


「あぁ。…ちなみにお前その政府の回し者やらのこと本当にちゃんと知ってんのか?適当言ってんじゃねーの?」


「なっ!ちゃんと知ってるわ!」


「ふーん。じゃ、説明してみろよ。」


「はっはーんいいだろう!耳をかっぽじって聞くがいい!
政府の回し者、それはつまり特殊警察 翡翠組のことだ。」


「ほっほーう。それで?」

「翡翠組は政府が新たに発足させた特殊警察部隊。メンバーは中学校や高校などに潜入捜査しても怪しまれないような若い人材が揃っていると聞く。」


「ははぁ」


「翡翠組はもともと警察や保護者など大人の目が届かない場所で起こる事件を解決するために発足されたらしいな。つまりはこうだ。あっしら若洲鹿組はここらでは有名人だ。だからあんたは普通の高校生のふりをして駅の近くを彷徨いていた。違うか?」


「はっ全てお見通しだってか。さすが私のマブダチ。」


全部嘘だけど、と志暢は心の中で付け足した。
今、自分がやるべきこと。それは時間稼ぎだ。どうにかして若宮たちの気を惹き、里美たちが来るまで耐え抜かなければならない。


ヤンキーの一人やふたりは軽く倒せても、それが数十人となれば話は別だ。昔ちょっとやんちゃしてたといえ、やはり現役には負ける。そういうものだ。




「それで?私をどうしようってんだ?」


「もちろんボコボコにしてからお帰り願いたいが、それだけではつまらない。だからあっしたちと一緒にこの公園の奥まで来てもらおう。」

若宮がそう言うと、背後まで迫ってきていた部下たちが志暢の両腕をガッチリホールドし、逃げられないようにした。



「もうすぐ奥口たちが来るんだろう?あぁ、楽しみだなぁ。何もかもが壊されたあいつらの絶望した顔を見るのが。」




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