Dilemma
「こんにちは。…いいえもしかして初めましてかしら?」

くぅちはすらすらと話しかける。


「いや、こんにちはでいい。お互い初対面かも分からないし、顔見れないから。」


「そうですか。わかりました。ところで、貴方様は個人情報を気にされるお人かしら?」

「いや別に。なんで?」

「だってやはりプライバシーに関わることですし…もし良ければボイスチャーで声を変えることも出来ますよ。どうされます?」

「そういうことは先に言おうぜシスター。いいよ、あんたの好きにしても。」

「あら、これは失礼しました。以後気を付けます。」

言って、くぅちはハンカチで滲み出る汗を拭った。人の話を聞くのが得意とはいえ、やはり相談なのだから緊張するのだ。間違った答えを出してはいけない。くぅちはいつも慎重だ。

くぅちは苦笑いしながら、ボイスチャーのスイッチを入れた。
途端に、相手の声が低くなった。

「んんっあっあっー…どう?どんな感じ?いい感じ?」

ボイスチャーにいい感じも悪い感じもないだろう、と内心思いながらも『大丈夫ですよーちゃんといい感じに変わってますよー』とくぅちは答えた。



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