Dilemma
愛梨が意識を失って数分後のこと。
ついに彼女を一撃でノックアウトに追い込んだ人間が姿を現した。
がきっと屏の隙間に脚を掛ける。
それに合わせて、長い黒髪が揺れた。
「…あ?…ヤッベー散らばってんじゃねーか、荷物。」
この時、愛梨には知る由も無かったが。この女もまた、転校生の一人だったのだ。
まぁ、ある意味運命的な出会いだった訳だが。
「…っしょっ…と」
まるで重力を感じさせないような身軽な動きで、校内に降り立つ。
「はーあぁ…鞄…鞄っと…おっケータイ発見。」
がさがさと適当に茂みを探していると、ケータイを見つける。
一応、壊れていないか確認すると、そのままポケットにするりと入れた。
立ち上がって、周囲を見回す。
「ったくついてねーな。転校初日に大遅刻なんてよ。」
そう、今はもう夕刻に近い時間なのだ。
沈みかけた、夕陽を一瞥すると、志暢は周囲を探し始めた。
周囲にはいろんなものが散らばっていたが、中でも鞄が一番重要らしい(当たり前か)。
「ちょっと遠くに投げすぎたな…どこいった?」
私の鞄、と言いかけたその時、女は発見してしまった。
「…あり?」
探していた鞄は見つかった。
だが、もっと大変なものを見つけてしまった。
それは人間だった。