Dilemma
「ふーん。なるほどねぇ…」
あれから。志暢と初めて出会った時のこと、そして私達がこの学園に呼ばれた理由であろう話を棗に聞かせた。
…鞄が顔にめり込んだ話は爆笑されたが。
「…まぁ志暢ちゃんの推測はほとんど正解やろねぇ。ウチも同じ考えや。」
「えっわかるの?」
「まぁな…これでも地元ではキレ者や呼ばれてた女やで?」
知りたい?とでも言うように棗の瞳が問いかけてくる。
愛梨はごくり、と息を呑んだ。
しかし、ふっと棗は顔を逸らす。
「気が変わった。」
「…ええっ!?」
「志暢ちゃんはあえて教えんかったんやろ?なら、ウチもそれに従うわ。自分で考えなさい。」
「そんなぁ…」
「まぁそんなに知りたいなら、ヒントでもあげんこともないで?」
「ヒント?」
「そやなぁ…」
棗は遠くを見るように、目を細めた。
トン、と拳を胸に当てる。
「答えはいつだってここに。」
「…………!」
「自分の胸に聞いてみなさい。自分のことは、自分が一番良く知ってる筈や。」
「……………」
「…ん?」
「…ズルいよみんな。わかんないの私だけじゃない」
しかも、二人とも同じこと言ってるし。
「あはは!ま、あんまり生き急ぎなや?人生を楽しく生きるコツは、じっくり、ゆっくり、平凡に、や。」
「平凡で悪かったねーっだ!」
愛梨は思いっきりあっかんべーした。