Dilemma
「ん~この部屋には一体何が必要なんだろうな」
「せやなぁカラーボックスとかは?あれなら本棚とかちょっとした机とかに使えるし。」
「成程。じゃあ私が家に余ってたの持ってくるよ。あとは漫画とかどうだ?」
「いいね!暇な時読めるし!」
普段の3人の姿からは想像できない程物事があっさりと決まっていった。
しかしそれが長く続くはずもなく…
「エアコンがあれば夏も冬も最高だよな。あとテレビとか。モニターがわりに出来るし。」
「ボードゲームとかも一式欲しいなぁ。あとトランプとかも。」
「あぁ…定番だよな。っつーかそこはもうテレビゲームで良くね?」
「…………………」
何だか雲行きが怪しくなってきた…
電化製品とかどうやって持ち寄るのさ。
トランプとかならまだしもテレビゲームって…お前ら部活やる気あんのか?
「…あぁ!ウチ、電気ケトルが一番欲しいなぁ!」
「いいじゃねぇかそれ!」
「あれさえあれば入れたての紅茶がいつでも飲めるし、カップラーメンとかも食べられるで!」
「おお!家にあんのか!?」
「無い。」
「…………………」
「…………………」
「…愛梨」
「…はい?」
暫しの沈黙。
「買ってこい」
「ええええ!!?」
予想はしてたけど!予想してたけどそんないきなり直球で来るとは思ってなかった!
「ついでにエアコンの設置。テレビの設置も。あとカードゲームとボードゲーム一式、その他お前がこの部室に必要だと思うもの全部持ってこい」
「すんません副部長!副部長が今挙げた中で部活に必要なもの何一つ無かったんですけど!!」
「おまえ雑用係だろ!」
「マジで勘弁して!!」
カードゲームやボードゲームならまだ何とかなるが、さすがにテレビやエアコン、ましてや電気ケトルなんて無理だ。
「文句言うな!副部長命令だ!」
「まぁまぁ志暢ちゃん」
落ち着いて、とひとり冷静だった棗が志暢をなだめる。
「部費があるやないの。」
「えっ部費!?」
愛梨が過剰に反応した。
「でも部費とかそういうアレは生徒会が関わってるから、生徒会と勝負して勝ったら部費ゲット!みたいなあーゆーアレ!?」
「そうなのか棗?」
「いや、あらかじめ理事長を通して部費は頂いてるから大丈夫やで。」
「なんだ…よかったぁ…」
今回ばかりは本気で焦った。
志暢に何だかんだいって押しつけられそうな雰囲気だったから。
「じゃあ、生徒会と対決!とかはまだ先なのか」
「そんな漫画みたいなこと起こんないって!」
「………………」
本当にそうだといいが、と棗はドアの向こうへ視線を送った。
先ほどから、鮮やかな茶色の髪がドアの前で揺れていたのを棗は見逃さなかった。
「…あ、もしもし副会長ッスか?私です、西谷ッス。…えぇ、改生労働会が今日から活動を開始したみたいッス。…チッ死ね副会長…え?何も言ってないですって~!」
生徒会執行部庶務・西谷はニヤリと口角を上げた。