Dilemma
「先輩は何にします?」

「…あんまり金無いしコーヒーでいいや。」

「あっ言い忘れてました。私の奢りです」

「すんませーんいちごチョコパフェスーパーデラックス下さい!」

二人から離れた席で一人ミルクティーを啜っていた愛梨は、深く溜め息を吐いた。


「…河森」

「ナッツです。」

「は?」


「名前が茉夏、ってことが一番の理由ではあるんですけど、私カシューナッツ大好きなんでナッツって呼ばれているんです!」

だから先輩もナッツって呼んで下さい!とナッツはニコニコと笑う。


「…ナッツ」

「はい志暢先輩!」

「…いいのか」

「はい?何のことでしょう?」

いきなり真面目なトーンになる志暢。


「…お前は理事長に利用されたんだそ。私たちが紫ノ宮に相応しいか判断する為に」

「それは…」

「そのうえ、私は問題児として転校してきた人間だ。決して世間の目も良いものじゃないだろう。」

志暢はコーヒーを飲んで、一拍置いた。


「そんな私と一緒にいていいのか?お前まで変な目で見られると思うけど…」

「………………」

ナッツは答えずにパフェのクリームをすくった。

そのままぱくり、と口に入れる。


「…私は理事長に利用されたとは思っていません。」

ナッツはにゃーん、と動作をつけて言った。


「言ったでしょ?私は猫を助けたかっただけだって!」

「…そうか。」

「それにね。やっぱり先輩は優しいなって。」

「…私が?」

「はい!自分だけが良ければそれでいい、という個人主義の中。一度は見捨てても、最後にはきっちりと手を差しのべる。そんな先輩の生き方に感動したんです!」

「いやそれただ志暢の性格が最悪なだけだから!」と愛梨は人知れずツッコんだ。
もちろん二人の耳に届くはずも無かった。


「現代社会において、なかなかそんなことを出来る人はいません!」

「…そ…そうか?」

「はい、少なくとも…あの学園には」

ナッツの顔が少し曇った。

「…お前何か知ってんのか?」

「いいえ。」

ナッツは首を横に振った。


「でも、多分何か知っている人がいます!私の知り合いで、3年生の方なんですけど…」


今度紹介しますね!とナッツはまた笑った。

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