Dilemma
私ね、夕焼けを見るのが好きなんです。
そう言って樹恵理は笑った。
志暢も同じように茜色の空を仰ぐ。
青空とは違う、目にじん…とくるような空だ。
「…足の調子はどうだ」
志暢がそう問うと、樹恵理は驚いたように目を見開いた。だが、すぐにニッコリと微笑んだ。
「…ご存知だったんですね」
「ちょっとした掲示板を覗かせてもらってな。そこで気になる噂があったもんだからひょっとして、ってな」
「…そうでしたか。」
樹恵理はそう呟いた。
「なぁ安。お前、ファンのこと好きか?」
「はい?」
唐突に志暢に訊かれ、樹恵理はきょとんとした。
「…好きか?」
「勿論!ファンのみんなは私の命です!ファンのみんながいてくれるからこそ私はアイドルでいられるんです。」
「……そうか。そうなんだな。」
「?」
「…お前は、これからもずっと変わらないでいてやってくれよ。ファンの為に。そしてあいつの為にも。」
「…はい!」
変わる勇気
変わらない勇気
それはきっと、そんなに変わりのないものなのかもしれない。
だからこそ
信じてくれている人がいる限り
変わらないでいて。
「…お前に会わせたい人がいるんだ。」
「会わせたい人ですか?」
「お前のことを信じている、一人のファンだよ。」
「勿論!」
樹恵理はニッコリと笑うと走りだした。
それを志暢は「改生会の部室だぞー」と見送った。
「…“信じている”か…」
ふわり、と夕方の優しい風が吹き、志暢の長い髪が揺れる。
相変わらず眩しいくらいの夕焼けだ。
「羨ましいよ…信じてくれている人がいて」
だって
自分にはもう、そんな人いないから。
そう言って樹恵理は笑った。
志暢も同じように茜色の空を仰ぐ。
青空とは違う、目にじん…とくるような空だ。
「…足の調子はどうだ」
志暢がそう問うと、樹恵理は驚いたように目を見開いた。だが、すぐにニッコリと微笑んだ。
「…ご存知だったんですね」
「ちょっとした掲示板を覗かせてもらってな。そこで気になる噂があったもんだからひょっとして、ってな」
「…そうでしたか。」
樹恵理はそう呟いた。
「なぁ安。お前、ファンのこと好きか?」
「はい?」
唐突に志暢に訊かれ、樹恵理はきょとんとした。
「…好きか?」
「勿論!ファンのみんなは私の命です!ファンのみんながいてくれるからこそ私はアイドルでいられるんです。」
「……そうか。そうなんだな。」
「?」
「…お前は、これからもずっと変わらないでいてやってくれよ。ファンの為に。そしてあいつの為にも。」
「…はい!」
変わる勇気
変わらない勇気
それはきっと、そんなに変わりのないものなのかもしれない。
だからこそ
信じてくれている人がいる限り
変わらないでいて。
「…お前に会わせたい人がいるんだ。」
「会わせたい人ですか?」
「お前のことを信じている、一人のファンだよ。」
「勿論!」
樹恵理はニッコリと笑うと走りだした。
それを志暢は「改生会の部室だぞー」と見送った。
「…“信じている”か…」
ふわり、と夕方の優しい風が吹き、志暢の長い髪が揺れる。
相変わらず眩しいくらいの夕焼けだ。
「羨ましいよ…信じてくれている人がいて」
だって
自分にはもう、そんな人いないから。