Dilemma
じゃり、と道を歩く。


バイクは墓場の入り口に停めてきた。
誰もいない、たったひとりで。



もうすぐ命日
当日に来る予定だったはずが、バイクは自然に墓場へと向かっていたらしい。


自嘲気味に里美は笑う。
すがりついているのは、私のほうなんだな、と。



じゃりじゃりと砂利道を歩きながら、空を見上げた。

今日はからっと晴れていて、まるで嵐の前の静けさだなと思った。


菅谷総長が亡くなって約一年。
想像していた以上に、周りは変わらなかった。


人間ひとりの命の重みとは、こんなものなのか。



答えは誰も教えてはくれない。
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