Dilemma
「…………」

想像はしていたが。

思っていた以上に墓の周りは酷かった。
墓石事態は洗われていないのか、緑に変色している部分が多い。
周りには雑草がぼうぼうと生い茂り、遠い昔に生けられたと思わしき花は、茶色く変色して枯れていた。



「…散々…だな」


雑草を抜くのに手間がかかりそうで、美咲を連れてこればよかったと今更ながら後悔した。
総長が生きていた頃、あれだけ「総長総長」と言っていた奴らは現在は誰も来ていないらしい。

まったく、薄情な奴らだよ。



とりあえず里美は汲んできた水を墓石に流し、綺麗に拭き取った。
多少は汚れが落ちた気がする。


さぁ雑草を抜こう、としゃがみこんで一番長く太い雑草に手をかける。


「…ん?」


ぶちっと根元から雑草を抜いた瞬間、はらはらと色鮮やかな何かが舞い落ちた。



手に取ると、それは花びらだった。
ほかの雑草をがさがさと探ってみると、同じようにたくさんの花びらが出てきた。



「…………」

どういうことなのだろう。
これだけたくさんここに集中して落ちているということは、どこかから飛んできたものではないだろう。



「…もしかして」


私以外に誰かが墓参りに来たのか?





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