Dilemma
愛梨は呆然として校門の横に立っていた。
その隣には、いつもウザくてマイペースなチェックが珍しく唖然とした表情で立ち尽くしていた。


回りにいた生徒たちも同様に呆けた表情である一点を見つめている。


何か、が近づいてくるのだ。
いや多分人だろう。人の大群がこちらへと押し寄せてくるのが見える。

しかも、先頭には見知らぬ女性と親しげに肩を組んだ良く見知った顔まで見える。

正直逃げたい。
服装が乱れている、とチェックに呼び止められていたがチェックはただ今硬直状態。横をすり抜けたって気付かないだろう。


さっと踵を返し、次の一歩を踏み出そうとする。しかし、もう手遅れだった。


「よーお愛梨!ご機嫌いっかがー?はっ?私?私今超ノリノリなんですけど~」


駄目だ、こいつ超殴りたい。愛梨は憎々しげに顔を歪めた。
いろいろと突っ込みたいことは山ほどある。なぜ大群と共に登校してきたのかとか、なんで喋り方がギャル風なのかとか。

しかし、一番に突っ込まなければならないところは他にある。


「…どちら様ですか?」


愛梨は志暢の隣に立っている女性におずおずと話しかけた。



「よっすぃ~!もしかしてノブのダチかあんた?あたしは若宮さ。ノブのマブダチだ、シクヨロ!」


「…ノブ…?マブダチ…?」


流石の愛梨もついていけない。


「つまりはそういうことだ愛梨。分かったか?」


「いやどういうこと!?分からん!状況理解出来ない!」


「気にするな。…ダチってのはな、気付いたらなってるもんなのさ。」


「だから友達いないあんたの言えたことじゃ…」

その言葉を遮るかのように、志暢は愛梨の肩に手を置く。


その瞳は強く何かを訴えかけているように見える。
意味は分からない。だが、愛梨は何かを感じ取り、静かに首を縦に振った。

< 88 / 115 >

この作品をシェア

pagetop