Dilemma
「志暢、大丈夫かな…」

部室へと続く廊下を歩きながらはぁ、と愛梨は溜め息を吐いた。

隣を歩いている棗が答える。

「大丈夫ちゃう?悪運強いやろあの人。ヤンキーと戦っても普通に勝ちそうやし。」

「そういう問題じゃなくて。もしかして志暢は最初から若宮って人が若洲鹿組のボスだって気づいてたのかな?」


だから付いていったのかな、と愛梨は呟く。


「そんな心配せんでも…殺したって死なへんやろ。」


「それは棗も同じじゃ…ってそうじゃなくて、危険過ぎるよ!不良グループのボスに付いていっちゃうなんて…」


「…志暢ちゃんのこと、ほんま好きやねんな。」


「はっ?!違うし、別にそんなんじゃ…だってあいつ初対面でカバン投げつけてきたんだよ!?」

「はいはい。」


棗はクスクスと笑った。

二人が部室の前まで来たとき、ドアの前で立ち止まった。

中の電気が点いているのだ。

不審に思い、慎重にドアを開けた。



「やぁやぁやぁ諸君。ただいまからここは緊急のティーパーティー会場だ。」


「…御崎先輩」


その隣で里美は早くも紅茶を飲んでいた。


「…高蔵のことが心配なのも分かる。だが焦るな。こういうときは茶でも飲んで落ち着くのが一番だ。そう思わないか?」


愛梨と棗はお互いを見つめ、そして微笑んだ。



「「出ていけ、不法侵入者め。鼻の穴から紅茶飲ますぞ。」」
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