Dilemma
「あら?」

紅茶を飲んでいた棗は、不意に鳴り響いた携帯の着信音に動きを止めた。


「…誰だ」


里美から問われた棗はディスプレイの文字を見ると、ニヤリと笑った。悪魔のような笑みだ。


「…うちの副部長からです。」


「…棗それ本当?志暢からなの?」


「いいから早く出なよ!沖田!」

御崎に急かされ、棗は電話に出た。


「もしもーし?ご機嫌いかが?志暢ちゃん」


『………………』


「…そっちから掛けてきといて、無言通話やなんてええご身分やねぇ』


『…いまトイレなんだ。』

「はぁ。うちはあんたのトイレ事情聞くほど暇とちゃうねん。すまんなぁ。」


『いいから話を聞け。私は今紫ノ宮町第3公園にいる。』


「…………」


『…この公園はな、霊園と併設されているらしいんだ。』


「沖田、高蔵は何と?」


棗は振り返らずに里美に行った。


「…紫ノ宮町第3公園にいるらしいです。」


「…なんだと…?」


里美、そして御崎の顔色が変わる。



『それでな、ヤツらよく分からんが誰かの墓参りに行こうとしているみたいなんだ。』


「変われ沖田」

里美は棗の携帯を奪い取った。

「あたしだ。高蔵、お前が一緒にいるやつらは若洲鹿組のヤツらだ、間違いない。ヤツらは一体そこで何をしようとしているんだ。」


「さぁねぇ。霊園なんだから墓参りなんじゃないっスか?」


「…それは恐らく間違いだな。なぜならその霊園は」


志暢はトイレのドアをバンッと勢い良く開けると、出口へと歩いた。



志暢は閉じていた目を開けて、不敵に微笑んだ。


瞬間、ガツンっと音をたて、志暢の頬をかすった石が後ろの壁に当たる。



「へい、親愛なる相棒?一体誰と電話しているだい?家族?お友達?それとも頼りになる元ヤンの先輩たち?」


若宮は木刀を振りかざした。


電話を切る寸前、志暢にはかろうじて里美の言葉が聞こえていた。



「なぜならその霊園は、チーム菅谷の元総長 菅谷真悠子さんが眠っている場所だからだ。」


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