もっと、君に恋していいですか?
「やっぱり私、かわいくないな…。そんな時まで仕事の事で一杯になって、唯一の連絡手段のスマホを忘れて出掛けちゃうんだよ。嫌われても仕方ないか…。」

梨花は店員を呼び止めて、薫のビールを注文した。

薫はバッグの中から小さな袋を取り出した。

「加賀美の事務員さんがね…好きな人のためにキレイになるのも、素敵な事よって…これ、くれたんだけど…もう、必要ないみたい。私なんかに似合わないし…。長野さんにあげる。」

差し出されたそれを受け取り、中身を確かめてから、梨花は悲しそうに薫を見た。

「卯月さんは…それでいいんですか?」

「だって…こんな女らしくない私なんか、笠松くんには似合わない。私なんかと付き合ってるって社内の人に知られたら、笠松くんに恥ずかしい思いさせちゃうよ…。」

運ばれて来たビールを店員から受け取り、薫は涙を浮かべてビールを飲んだ。

「もういいの。少しの間でも、笠松くんには大事にしてもらったから。それだけでもうじゅうぶん…幸せだったから…。」


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