もっと、君に恋していいですか?
「さすがにね…。夏だし…汗かくから思いっきり化粧崩れるし…いい歳してみっともないかなって…。」

薫が志信と付き合う前に、“化粧直しをしたいけど化粧品を持ってないから貸して欲しい”と梨花に言った事が1度だけあった。

それまでは化粧崩れなど気にした事もなかった薫が突然化粧直しをしたいと言ったので、志信を意識し始めたのだと梨花は気付いた。

相変わらず女らしい事をするのを恥ずかしがりながらも、本人は絶対口には出さないが、志信のために少しでもキレイになろうとしている薫を、歳上だけどかわいいと梨花は思う。


「これも使って下さい。ヘアフレグランスミストです。髪の匂いも気になるんですよね?」

「ありがとう…。よくわかるよね…。」

梨花は薫の髪にミストを吹き掛けながら、少し小声で言う。

「わかりますよ。好きな人のために一生懸命な卯月さん、ホントにかわいいです。」

「えぇっ…?!」

真っ赤な顔をして驚く薫を見て、梨花は満足そうに笑った。

(もう勘弁して…。ホントにこの子には敵わないよ…。)





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