もっと、君に恋していいですか?
自宅に戻った志信は、シャワーを浴びて濡れた髪をタオルで拭きながら、床に座り込み、大きなため息をついた。

(カッとなって薫にあんな事言うなんて、オレってホント情けない…。)

冷静になってみると、あんなのただのみっともない男の嫉妬の塊だ。

自分の目の前で薫が敦に抱きつかれたり、手を握られプロポーズされているのを、ただ黙って見ているしか出来なかった。

本当は“薫に触るな、薫はオレの彼女だ”と言って、敦の手から守りたかった。

薫は後輩たちに尋ねられても、敦に何を言われても、自分と付き合っている事を言わなかった。

それは恋人であることを薫にも認められていないようで、情けなくて悔しくて、寂しかった。

そして、仕事の出来る薫に対しての劣等感。

他の誰よりも仕事を頑張っている薫が好きなのに、どんなに頑張っても手が届かないようで、自分の頼りなさを突き付けられた気がした。

(薫はオレのどこが良くて好きだって言ったんだろう…。)



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