もっと、君に恋していいですか?
「…泣いてなんかないですよ。顔洗ってただけです。」

「へぇ?顔洗うと目とかそのまわりが赤くなるんだね、薫ちゃんは。」

「……なってないですから。」

薫は敦の視線から逃れるようにうつむいた。

「どうしたの?彼氏とケンカでもした?」

「……津村さんには関係ないです。」

本当は志信を怒らせてしまったのは、昨日のビアガーデンでの敦の言動が大きな原因だったとは思う。

でも、それはほんのきっかけに過ぎなくて、そうなったのはきっと自分の責任だ。

こんな話を敦にするわけにはいかないと思いながら、薫はビールを煽った。

「薫ちゃんの彼氏はどんな人?」

「……話しませんよ、津村さんには。」

敦の問い掛けに薫がそっぽを向いてぶきっらぼうに答えると、敦はニヤリと笑った。

「ふーん…。じゃあ社内の人だ。」

「……何も話しません。」


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