【完】俺の言うこと聞けよ。〜イジワルな彼と秘密の同居〜
樹さんはあはは、と笑いながら私の帽子を直してくれる。
今日はなんだか慌てすぎてこんなのばっかり。
恥ずかしくて、そそっかしい自分をあらためて反省した。
「ありがとうございます」
「いえいえ。亜里沙ちゃんってけっこードジだよね?」
「そ、そうですか??」
「うん。
まぁそこがかわいーんだけど」
「…えっ//」
いつもこういうことをなんの照れもなく言ってくれる樹さん。
だけど別にチャラいわけでも、下心を感じるわけでもない。
そのへんが、小川さんとはちょっと違うかもしれない。
…なんてことを考えていたら、目の前にドカン、と材料に使うクルミの入ったバットが置かれた。
「おわっ!琉衣!」
「…チッ、二人とも、雑談してる暇あったら手動かせよ」
「ご、ごめんっ…!」
ジロッと私に睨みをきかせる琉衣くん。
ドキッとして背筋が伸びる。
琉衣くんは仕事に関してはとにかくストイックで厳しいから、こういう時私や樹さんはよく怒られるのだった。
「あーまた怒られちった」
「あはは…」
「とか言って、琉衣の奴実はヤキモチ妬いてんじゃねーの?(笑)」
「えっ!?」