【完】俺の言うこと聞けよ。〜イジワルな彼と秘密の同居〜
思わず口から出てしまった。
私はべつに、小川さんを庇いたかったわけじゃない。
とっさに琉衣くんを止めたのは、彼に殴ったりなんてしてほしくなかったから。
いつも一生懸命パンを作っているその手で、人を殴ってほしくなかった。
琉衣くんの仕事に対する真面目さや、パンへの愛を知っているからこそ、それだけはしてほしくなかった。
だから、気付いたら飛び込んでた。
琉衣くんは一瞬ハッとしたような顔で私を見ると、そのあとすぐうつむいたように目を逸らした。
ふぅっとため息をついて。
それから手を下におろした。
私も手を離す。
なんともいえない沈黙が流れて数秒…
そこに誰か駆けつけてきた。
「おい、どうした?」