【完】俺の言うこと聞けよ。〜イジワルな彼と秘密の同居〜
だから結局、我慢するしかなかった。
こういう時何が何でも嫌だと言える強さがあればいいんだけど…。
周りの人のこととか、断って困る人がいるかもとか考えると自分が我慢すればいいかなって思っちゃう。
最終的には別にいいかなって思っちゃう。
弱いよなぁ、私って…。
でももう決まったことならば、やるしかないんだから。
ここは二カ月間耐えるしかないよね。
そうだ。
これもきっと、お父さんが言うようにいい経験になるはず。
だって、夢への一歩かもしれないもの。
立派なパン職人になるための修行なの。
そう思えばいいんだ。きっと。
宮川家にお邪魔するまであと一週間。
店の休業まであと一週間。
あと一週間か…。
だんだんと眠たくなってきて、重たい瞼を閉じる。
だけどこの時の私はまだ、来週から始まる新生活が、
予想以上に大変なものになるとは思ってもいなかった。