【完】俺の言うこと聞けよ。〜イジワルな彼と秘密の同居〜
心臓が変な音を立て始める。
ドクドクドクドク……
見ていられなかった。
「…はっ?おい、なにやって…、」
「…嬉しかった。
助けてくれて……」
「……」
沙良さんはさらに甘えるように琉衣くんにぎゅっとしがみつく。
それに戸惑いながらも抵抗しない琉衣くん。
その様子はもう、ただの同僚同士には見えなかった。
”かつての恋人同士”
そんな空気が伝わってきて…。
琉衣くんにとって沙良さんは、
やっぱり大事な人なんだ…
それを思い知らされたみたいに。
…ガチャン、
私は洗いかけの包丁を落として、
自分の指が切れたことにも気づいていなかった。
シンクには真っ赤な血が、
白い泡を赤く染めていた。