【完】俺の言うこと聞けよ。〜イジワルな彼と秘密の同居〜

***

「あっちゃー…。

コレは明日から手袋だね」



樹さんがそう言いながら私の指に絆創膏を貼る。


二人きりの休憩室は静かだった。


バカな私はよそ見ばっかりして包丁を落として指を切って。


気づいた時には手は血まみれ。

中指の腹がぱっくりと割れていた。


今になって思い出したように痛い。


指が。

ううん、心が。


なんかもうどうでもよくなってきちゃう。


笑えてくる。



あの後すぐ樹さんが私の怪我に気が付いて、手当てのため休憩室に連れてきてくれた。


琉衣くんはなぜか「俺がやる」なんて言ってくれたけど、樹さんがそこは譲らなくて。


「これは先輩の命令」なんてよくわからないことを言って私を連れて行ったんだ。


きっと私が放心状態だったから気を使ってくれたのかも。


察しのいい樹さんのことだから…。


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