【完】俺の言うこと聞けよ。〜イジワルな彼と秘密の同居〜
そう言われて思い当たるのは一人しかいなかった。
「もしかして、小川さん…」
「そうそう。
キッチンに新たに入ってきた小川さんが沙良ちゃんに目をつけて、何かと構ってくるようになったんだよね。
それに琉衣が嫉妬してさ。
琉衣もあいつ嫉妬深いし、ガキっぽいとこあるから、ちょっと束縛っぽくなって…それが沙良ちゃん的にはキツかったのかもね。
小川さんはその時まだ猫かぶってたから優しくて。
そんな小川さんにうまーく言いくるめられて、そっちに流されていっちゃった。
沙良ちゃんも流されやすい子だからさ。
気づいた時には琉衣と別れて小川さんに乗り換えてた」
「えっ……」
そんなのって…
「じゃあ琉衣くんは…」
「荒れたよ〜?(笑)
いや、かなり落ち込んでたかな。
それまでモテすぎて恋愛で悩んだことなんかなかったあいつだから。
裏切られたみたいでショックだったんだろうな。
女なんか信用できねぇ、って言って彼女作るのやめて。
沙良ちゃんとも険悪なムードになっちゃったしさ。
しばらくして沙良ちゃんは自分から辞めた。
琉衣はそれを自分のせいだと思ってさらに責めて…」
「そんな、別に琉衣くんのせいってわけじゃ…」
「うん。そうじゃないよ。
でも琉衣は責任感じちゃったんだろうな。
ただでさえ人足りない職場だし。
でも結局沙良ちゃんが辞めたのは、小川さんとうまくいかなくてすぐに別れたせいでもあったらしいよ。
小川さん女たらしで浮気ばっかしてたらしいし。
沙良ちゃん的にはもしかしたら琉衣と別れなきゃよかったって思ったかもしれないけど…時すでに遅しだよね」