【完】俺の言うこと聞けよ。〜イジワルな彼と秘密の同居〜
「そ、そんな…」
なんだかとても琉衣くんがかわいそうに思えた。
沙良さんの気持ちも分からなくはないけど、ちょっと自分勝手な気がする。
それでまた戻ってきたら、琉衣くんが避けるのも当たり前かも。
複雑な表情も、冷たい態度も、
全部そのせいだったんだ…。
小川さんとのあの件も、ようやく意味がわかった。
だけど…
もし小川さんが現れなかったら、二人は今ごろ…
どうしてた?
「琉衣にとってはちょっとトラウマなんだよな、沙良ちゃんのことは。
苦い記憶っていうか、そんな感じ?」
「……」
「でも俺は思うんだよ。
琉衣もその経験から色々学んだだろうし、
それを乗り越えてあいつは成長したわけで…」
樹さんはしみじみと語る。
だけど、私はその言葉を丸々信じることはできなかった。
「……そう、なのかな…」
「えっ?」
「ほんとに琉衣くんは…乗り越えたんですか?」
ふと疑問に思った。
本当に沙良さんのことをふっきれたのかなって。
そんな別れ方して…
「あ、亜里沙ちゃん…?」