【完】俺の言うこと聞けよ。〜イジワルな彼と秘密の同居〜
すると、誰かにふと名前を呼ばれたような気がした。
あれ…?
空耳かな?
でも確かに今……
「…亜里沙っ!!」
ドキッ…。
だけどそれはやっぱり、空耳じゃなくて。
どこかで聞いたことのある、いや聞き慣れている、
あの愛しい人の声だった。
「亜里沙!!亜里沙!!」
呼んでる…。
彼が私を……
私は思わず窓から顔を出して、外を見た。
するとさっきの白いコックコートの人物が、こちらに向かってきていて…
反対側の歩道を走ってる。
ウソ…あれは……
「…っ、琉衣くん!!」
その姿を見ただけで涙が出そうになった。
どうして、ここに…?
私のこと、追いかけてきたの…?
見送りに来なかったのに。
どうして…
なんで今、ここにいるんだろう。
私はもう今すぐにでも、飛び出して行きたかった。
だけどそんな時すぐ信号が青になって。
とたんに車が動き出した。
ダメ…、
このままじゃ…
「お父さん!止めて…!!」