寵愛の姫 Ⅱ【完】



…………良く見れば、その口元は何故だか綻んでいた。



「…何で、俺の上着を抱き締めてるんだよ。」



上着を取り上げても、熟睡しているのか、莉茉が起きる気配はない。




固く閉じられた瞳。




その目に自分が映らない事を不満に思うのは、ただの俺のエゴに過ぎないんだろう。



「…昨日、莉茉には無理をさせたからな。」



ゆっくりと莉茉の首筋に視線を落とせば、散らばる赤い花が目に止まる。
< 115 / 440 >

この作品をシェア

pagetop