寵愛の姫 Ⅱ【完】



「…莉茉は醜くねぇよ。」


「……え?」



驚きに顔を上げる。




「莉茉は、叶や妹を恨んだり憎んだりしなかった。」


「……。」


「そんな人間の心が醜い訳がねぇだろ?」



そっと優しく私の頬を撫でる暁の大きな手。



「お前は、自分が悪いんだって思っちまうぐらい心の優しい女だ。」


「っ、」



ぽたぽたと私の涙がお湯の中へと落ちていった。
< 19 / 440 >

この作品をシェア

pagetop