寵愛の姫 Ⅱ【完】




「莉茉にもぜってぇに悟られる事もするな。」



短くなった煙草を灰皿で揉み消した暁の視線が玄関の方へと向けられる。




…何だ?




怪訝に思った瞬間、聞こえたドアの施錠を開ける音。



「あれ、誰か来てる…?」




とたとたと近付く莉茉ちゃんの足音に、緊迫した部屋の空気も霧散した。




「お帰り、莉茉。」


「ただいま、暁。」




にっこりと暁に微笑んだ莉茉ちゃんの視線が俺に向けられる。
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