初めてのお正月
初めてのお正月
「お義父さん!こんばんわ!」
結婚して初めてのお正月。
俺は妻と実家に帰った。
「おお、美南さん、いらっしゃい。
幸助も。」
「幸助もって。」
結婚前から親父は美南に鼻の下を伸ばしっぱなしで、話にならない…
「母さんは?」
「はいはい、いらっしゃい。
美南ちゃん、遠いところご苦労さん。幸助も。」
この夫婦は…
息子の俺より美南かよ!
「これ、家の近所の美味しいお菓子やさんの大福なんです。
ぜひお義父さんとお義母さんもお食べになってください!」
美南は昔から社交性がある
いつの間にそんな物を買ってたのか?
「おおこれはこれは…どうもありがとう。さぁさ、上がって上がって」
「お邪魔します。」
久しぶりの我が家の余韻に浸る暇もなく、母さんの手料理が振舞われる。懐かしくて少し嬉しかったけど、美南はさっきから親父につかまりっぱなしだからうかうかしてられない。
…まったく。
美南がトイレに立ったその隙に
「おい親父、あんまり美南困らすなよ。」
「美南さんはとってもいい人だ。」
…は?
人の話をまるで聞いちゃいない。
酔っ払ってるのもあるんだろうけど…
俺ははぁっとため息をついて
「とりあえず、もうビールは飲むのやめとけよ。これ以上酔っ払ったら美南が困るだろ」
親父からジョッキをひったくると
母さんのいる台所に持っていく。
「父と息子が逆転したようだよ」
話を聞いていた母がそう言って
ケタケタ笑う。
台所から居間に戻って座ろうとしたとき、美南が戻ってきた。
「おトイレお借りしました」
「美南さん、こっちだよ」
親父が自分の隣をポンポンと叩く。
少し困ったように笑いながら美南はそっちに向かう。
イラっときた俺は
「美南はこっちだ」
と美南の手を引き俺の隣にぴったり座らせる。
「幸助さん?」
少し驚いて赤くなった。
実家に帰ってきて初めて見た、美南の安心した顔だった。
夜も更けて、寝る時間になった。
「お義父さん、お義母さん
お休みなさい」
「お休みなさい」
俺と美南は今夜、元々俺の部屋だった場所で寝る。
「ふぅーっ、お夕飯、美味しかったね。たくさん食べちゃった。」
美南がふわっと笑う。
こうして見ると、中学校の時の面影が残っていて、懐かしい気持になるなぁ…
中学生の時、俺と美南は同級生だった。俺は中2の夏頃から美南の事好きだったが美南は全然好きじゃなかったらしい…
俺は気持ちを伝えることができないまま高校生になって、
3年になり予備校で再会た。
卒業してからもずっと引きずっていた気持ちとあの頃よりさらに綺麗になった美南を見て、伝えようと思った。
返事はなんとOKだった。
「あの頃は金井くんのこと
なんとも思ってなかったけど卒業してからなぜかずっと忘れられなくて…」
俺たちの交際はそこから始まり、
5年が経った今俺たちはこうして夫婦になった。
「お義父さんもお義母さんも
すごくいい人!」
「どこが…
親父なんか若い女の子大好きだからさ、なんかゴメンな。
色々迷惑かけただろ」
美南は首を振り
「最初は戸惑ったけど
お義父さんとっても面白いから
たくさんお話聞いちゃったよ」
と言う。
俺にはもったいないくらいいい女だとは思うけど
たまに物分りが良すぎてストレスためてないかと心配になる…
俺が黙ったのを見て
美南はクスリと笑い、
「それに、お義父さん女の人が好きなら、息子の幸助さんも…」
と言った。
ちょっとムッとした俺は
「俺が好きなのは美南だけだよ。」
と言って美南の反応を楽しむ。
案の定美南は
「っ…、冗談で言ったつもりなのに」
と言ってうつむいてしまう。
妻になってもこういうところは付き合い始めた頃と何も変わらない。
「ねっ、寝よう?」
照れ隠しに電気を消して布団に入ろうとする美南の腕を引っ張り、
自分の足の間にすっぽり入れる。
そして後ろから抱きしめ、
「冗談か…ひどいなぁ美南は。
俺の気持ちもうそみたいじゃんか。」
そう耳元で囁くと
暗闇でもわかるほど耳を真っ赤にさせ、
「…知らないっ」
と俺の腕を解こうとする。
俺はさらに腕に力を入れ、
そのまま布団に美南を押し倒す。
「っ?!
幸助さ…」
「ずっと美南が好きだったんだよ。
今でも…。
夫婦として愛してもいる。
だけど中学生の時と同じように恋もしているんだ…。」
親父が美南と親しくしている時にわかった。
俺はまだ子供の時と同じような気持ちで美南に恋しているんだな…と。
中坊のような自分の幼さに
心の中で苦笑しながら、美南の綺麗な目を見つめる。
「そんなに見つめないで!」
初めて美南が俺の部屋に泊まったときのような顔になった。
…いや、可愛いけどさ。
今までもこういう状態になったことあるだろ?
なんで今日に限ってそんな泣きそうな顔になってるんだ?
「…なんでそんな泣きそうなんだ?」
そしたれ美南はもっと潤んだ目になり、うつむいてしまう。
「…なんでって…」
美南は体をよじらせて俺の腕から逃れようとするけど当然かなわなくて。
諦めたようにぼそっと、
「下にお義父さん達が居ると思うとこんな格好でいるの恥ずかしくて…
しかも幸助さんにそんなこと言われたら嬉しくて…」
と。
ますます顔を赤らめた美南は
もういいでしょって言って頭をごつんってしてくる。
…いや、いいはずないだろ?
こんな状況でこんなこと言われてこのままはいおやすみなんて言えるほど俺は紳士じゃないけど?
「美南、こっち向いて。」
ゆっくりとこっちを向くみなみの顔に手を添えて、完全に視線が交わった瞬間、唇にキスを落とす。
「…幸助さん、どうしちゃったの?」
お父さん相手にムキになっちゃって。と。
「悪いか?あいつは俺の親父である前に男なんだよ。好きな女をほかの男に取られていい気分になる男なんていねぇ。」
ふてくされたようにそう言うと
美南は俺の腕の中に入ってから初めて笑った。
「幸助さん…可愛い
私が一緒にいたいのは幸助さんだけだから結婚したのに。」
「!」
俺は美南にさっきよりも深いキスを何度も落とす。
はじめは控えめに受け入れてくれてた美南はちょっと疲れた、と言う感じで押し返してきた。
一度顔を離し、美南を抱きしめる。
「そんな可愛い事言うな。」
「ホントのこと言っただけだよ。
…幸助さん大好き。幸助さんだけを愛してるよ。」
美南が俺の頬に口づける。
びっくりして俺の手の力が緩んだ隙にお休みと言って隣の布団に入ってしまったが、そのあと恥ずかしがる美南を無視して朝まで寝かせなかったのは言うまでもない。
次の日の朝
「ありがとうございました!!」
「また来てちょうだいね。」
美南が爽やかに挨拶する。
昨日の夜の色っぽさや気だるさなど微塵も感じない笑顔で。
そんな美南を眺めていたら
親父が俺の耳にボソッとこう言う。
「孫が出来るのも早そうだな?
来年は3人で来いよ。」
「!!!」
やっぱり、
美南は声こそ出さなかったものの
結構動いたから下まで聞こえてたか…
恥ずかしさは感じなかったが、
そんな美南の姿を親父が想像してたんじゃないかと思うと気分が悪かった。
「さぁな?
まぁ、俺はもう少し美南とふたりでもいいと思ってるけど。」
こうやって見せつけるあたり、おれもやっぱり子供だ。
親父はにやっと笑い、まぁ俺が死ぬ前には孫の顔を見せてくれよと言った。
「それじゃあ。」
美南の手をとり、駅へ向かう。
「…ねぇ幸助さん。
私、子供は男の子がいい。幸助さんに似た可愛い子。」
「いきなりどうした?」
どきりとした。
「お義母さんとそういうお話したの。」
よかった。親父との会話は聞かれてない。
「俺は美南に似た女の子がいい。」
美南はふわっと笑い、
「じゃあ、2人頑張るねぇ」
と言った後
「あっ、いやらしい意味じゃないよ?!ただ、子供が好きだからっ!」
と一人で慌ててた。
俺とこの愛しい人の一生は
まだ始まったばっかりだ。
結婚して初めてのお正月。
俺は妻と実家に帰った。
「おお、美南さん、いらっしゃい。
幸助も。」
「幸助もって。」
結婚前から親父は美南に鼻の下を伸ばしっぱなしで、話にならない…
「母さんは?」
「はいはい、いらっしゃい。
美南ちゃん、遠いところご苦労さん。幸助も。」
この夫婦は…
息子の俺より美南かよ!
「これ、家の近所の美味しいお菓子やさんの大福なんです。
ぜひお義父さんとお義母さんもお食べになってください!」
美南は昔から社交性がある
いつの間にそんな物を買ってたのか?
「おおこれはこれは…どうもありがとう。さぁさ、上がって上がって」
「お邪魔します。」
久しぶりの我が家の余韻に浸る暇もなく、母さんの手料理が振舞われる。懐かしくて少し嬉しかったけど、美南はさっきから親父につかまりっぱなしだからうかうかしてられない。
…まったく。
美南がトイレに立ったその隙に
「おい親父、あんまり美南困らすなよ。」
「美南さんはとってもいい人だ。」
…は?
人の話をまるで聞いちゃいない。
酔っ払ってるのもあるんだろうけど…
俺ははぁっとため息をついて
「とりあえず、もうビールは飲むのやめとけよ。これ以上酔っ払ったら美南が困るだろ」
親父からジョッキをひったくると
母さんのいる台所に持っていく。
「父と息子が逆転したようだよ」
話を聞いていた母がそう言って
ケタケタ笑う。
台所から居間に戻って座ろうとしたとき、美南が戻ってきた。
「おトイレお借りしました」
「美南さん、こっちだよ」
親父が自分の隣をポンポンと叩く。
少し困ったように笑いながら美南はそっちに向かう。
イラっときた俺は
「美南はこっちだ」
と美南の手を引き俺の隣にぴったり座らせる。
「幸助さん?」
少し驚いて赤くなった。
実家に帰ってきて初めて見た、美南の安心した顔だった。
夜も更けて、寝る時間になった。
「お義父さん、お義母さん
お休みなさい」
「お休みなさい」
俺と美南は今夜、元々俺の部屋だった場所で寝る。
「ふぅーっ、お夕飯、美味しかったね。たくさん食べちゃった。」
美南がふわっと笑う。
こうして見ると、中学校の時の面影が残っていて、懐かしい気持になるなぁ…
中学生の時、俺と美南は同級生だった。俺は中2の夏頃から美南の事好きだったが美南は全然好きじゃなかったらしい…
俺は気持ちを伝えることができないまま高校生になって、
3年になり予備校で再会た。
卒業してからもずっと引きずっていた気持ちとあの頃よりさらに綺麗になった美南を見て、伝えようと思った。
返事はなんとOKだった。
「あの頃は金井くんのこと
なんとも思ってなかったけど卒業してからなぜかずっと忘れられなくて…」
俺たちの交際はそこから始まり、
5年が経った今俺たちはこうして夫婦になった。
「お義父さんもお義母さんも
すごくいい人!」
「どこが…
親父なんか若い女の子大好きだからさ、なんかゴメンな。
色々迷惑かけただろ」
美南は首を振り
「最初は戸惑ったけど
お義父さんとっても面白いから
たくさんお話聞いちゃったよ」
と言う。
俺にはもったいないくらいいい女だとは思うけど
たまに物分りが良すぎてストレスためてないかと心配になる…
俺が黙ったのを見て
美南はクスリと笑い、
「それに、お義父さん女の人が好きなら、息子の幸助さんも…」
と言った。
ちょっとムッとした俺は
「俺が好きなのは美南だけだよ。」
と言って美南の反応を楽しむ。
案の定美南は
「っ…、冗談で言ったつもりなのに」
と言ってうつむいてしまう。
妻になってもこういうところは付き合い始めた頃と何も変わらない。
「ねっ、寝よう?」
照れ隠しに電気を消して布団に入ろうとする美南の腕を引っ張り、
自分の足の間にすっぽり入れる。
そして後ろから抱きしめ、
「冗談か…ひどいなぁ美南は。
俺の気持ちもうそみたいじゃんか。」
そう耳元で囁くと
暗闇でもわかるほど耳を真っ赤にさせ、
「…知らないっ」
と俺の腕を解こうとする。
俺はさらに腕に力を入れ、
そのまま布団に美南を押し倒す。
「っ?!
幸助さ…」
「ずっと美南が好きだったんだよ。
今でも…。
夫婦として愛してもいる。
だけど中学生の時と同じように恋もしているんだ…。」
親父が美南と親しくしている時にわかった。
俺はまだ子供の時と同じような気持ちで美南に恋しているんだな…と。
中坊のような自分の幼さに
心の中で苦笑しながら、美南の綺麗な目を見つめる。
「そんなに見つめないで!」
初めて美南が俺の部屋に泊まったときのような顔になった。
…いや、可愛いけどさ。
今までもこういう状態になったことあるだろ?
なんで今日に限ってそんな泣きそうな顔になってるんだ?
「…なんでそんな泣きそうなんだ?」
そしたれ美南はもっと潤んだ目になり、うつむいてしまう。
「…なんでって…」
美南は体をよじらせて俺の腕から逃れようとするけど当然かなわなくて。
諦めたようにぼそっと、
「下にお義父さん達が居ると思うとこんな格好でいるの恥ずかしくて…
しかも幸助さんにそんなこと言われたら嬉しくて…」
と。
ますます顔を赤らめた美南は
もういいでしょって言って頭をごつんってしてくる。
…いや、いいはずないだろ?
こんな状況でこんなこと言われてこのままはいおやすみなんて言えるほど俺は紳士じゃないけど?
「美南、こっち向いて。」
ゆっくりとこっちを向くみなみの顔に手を添えて、完全に視線が交わった瞬間、唇にキスを落とす。
「…幸助さん、どうしちゃったの?」
お父さん相手にムキになっちゃって。と。
「悪いか?あいつは俺の親父である前に男なんだよ。好きな女をほかの男に取られていい気分になる男なんていねぇ。」
ふてくされたようにそう言うと
美南は俺の腕の中に入ってから初めて笑った。
「幸助さん…可愛い
私が一緒にいたいのは幸助さんだけだから結婚したのに。」
「!」
俺は美南にさっきよりも深いキスを何度も落とす。
はじめは控えめに受け入れてくれてた美南はちょっと疲れた、と言う感じで押し返してきた。
一度顔を離し、美南を抱きしめる。
「そんな可愛い事言うな。」
「ホントのこと言っただけだよ。
…幸助さん大好き。幸助さんだけを愛してるよ。」
美南が俺の頬に口づける。
びっくりして俺の手の力が緩んだ隙にお休みと言って隣の布団に入ってしまったが、そのあと恥ずかしがる美南を無視して朝まで寝かせなかったのは言うまでもない。
次の日の朝
「ありがとうございました!!」
「また来てちょうだいね。」
美南が爽やかに挨拶する。
昨日の夜の色っぽさや気だるさなど微塵も感じない笑顔で。
そんな美南を眺めていたら
親父が俺の耳にボソッとこう言う。
「孫が出来るのも早そうだな?
来年は3人で来いよ。」
「!!!」
やっぱり、
美南は声こそ出さなかったものの
結構動いたから下まで聞こえてたか…
恥ずかしさは感じなかったが、
そんな美南の姿を親父が想像してたんじゃないかと思うと気分が悪かった。
「さぁな?
まぁ、俺はもう少し美南とふたりでもいいと思ってるけど。」
こうやって見せつけるあたり、おれもやっぱり子供だ。
親父はにやっと笑い、まぁ俺が死ぬ前には孫の顔を見せてくれよと言った。
「それじゃあ。」
美南の手をとり、駅へ向かう。
「…ねぇ幸助さん。
私、子供は男の子がいい。幸助さんに似た可愛い子。」
「いきなりどうした?」
どきりとした。
「お義母さんとそういうお話したの。」
よかった。親父との会話は聞かれてない。
「俺は美南に似た女の子がいい。」
美南はふわっと笑い、
「じゃあ、2人頑張るねぇ」
と言った後
「あっ、いやらしい意味じゃないよ?!ただ、子供が好きだからっ!」
と一人で慌ててた。
俺とこの愛しい人の一生は
まだ始まったばっかりだ。