恋なんてする気はなかった
そう言って、蛍は理子の左の耳たぶを人差し指でそっとなぞった。

「理子は理子だから。俺は俺だし。」

蛍くん、やっぱりなんにも分かってない。
理子はそう思いながら、蛍の笑顔を見つめていた。
この笑顔を失うのが、私は死ぬほど怖いのだ。
蛍くんよりも、絶対に私の方が蛍くんを好きなのだ。

「終わらないよ。終わってもまた始めればいいんだから。大丈夫。」

理子は頷いた。
恋をする気なんてなかった。
それも、よりによって12歳も年下の男の子に。
始めるつもりなんてなかった。
だけど、いつのまにか恋は始まっていて、もう私の手の届かない場所まで行ってしまった。

「大丈夫だよ、理子。」

潔く諦めよう。
恋はもう始まった。






end





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