恋なんてする気はなかった
季節外れの台風から1ヶ月がすぎ、季節は夏になった。
夏休みに入った蛍と理子は会社が休みの土日、たまにこうしてドライブに行く。
二人の関係は?と聞かれれば、友達と答えるのが一番適切なのかもしれない。
でも、理子も蛍もそれを認めてはいなかった。

「12歳も年の離れた私と蛍くんが友達になれるわけない。」

というのが理子の理由で、
それにたいして蛍は、

「友達になれなくていいよ。俺は理子の友達になりたいんじゃなくて、彼氏になりたいんだから。」

などというから怖い、と理子は思う。

半ば無理やり口に入れられたポテトを蛍のように手を使わずに食べながらハンドルを握る理子に、

「今日は、なに買うの?」

と、蛍が少し身を乗り出してたずねる。

「お財布とサンダル、あとマキシワンピ」

来週は、アウトレットに買い物に行くから遊べないよ。
理子がそう言えば、蛍はじゃあ俺も行く、と当たり前のように付いてきた。
高速道路の料金所が近づいて、理子はゆっくりブレーキを踏んだ。
夏の日差しが窓ガラス越しに照りつけていた。

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