懲りもせず、恋する私
いつもと変わらない風景。

課内は、取引先と電話する人

上司とやりとりする人、


パソコンのキーボードを
叩く音。

提案した商品が
いよいよ形になる日が
やってきた。

資料を作成しながら、
そわそわして待った。

コンコン、
「よっ!藤倉!いるか?」
そこには、背の高い、
モデルさんみたいな男性が立っていた。

「お!坂野!出来たのか?」
その人は、にっこり笑って
左手の大きな紙袋を持ち上げた。

「佐伯!ちょっと!」
「はい!」
課長に呼ばれ
奥のパーテションのある
デスクに向かった。

「藤倉、紹介しろよ!」
「佐伯つぐみ。ウチの開発プロジェクト
の主力メンバー」

「よろしく、つぐみちゃん。
俺、坂野 秀 販売課長してるんだ」

「はい、佐伯です。よろしくお願いします」

席に座り、
差し出された商品。

「おー、これか!いいな!うん!」
「一応、大人女子のリサーチもして
出された案のデザインでコンセプトが

「甘い誘惑であなたをおとす」
「なんか小悪魔的で良いって」

「このケースのここに、おまけの香水の
小瓶がはいる。」

「どうだ?佐伯。」

「なんだか…。すごく…綺麗で
でも…かわいい形。宝石箱…。
良いですね。本当…」

思った以上の物になった商品が
目の前にある。

嬉しすぎて…。
スーッと涙が溢れた。

「佐伯…?どうした??」
「あっ、すみません。凄い素敵で
頑張った甲斐があったって言うか…」

佐伯つぐみ。
俺は、彼女の姿に、
引き込まれた。

長めの髪を軽く結び、
クリンとした茶色瞳。
ふわっとし雰囲気に
ドキッとした。

かわいい…。ヤバい。
俺、恋の魔法をかけられた。



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