懲りもせず、恋する私

悲しい嘘

百貨店に行きたくなくても

仕事。

「フゥ、しっかりしなきゃ」
控え室に荷物を置きに
行くと

「あら、佐伯さん。体調はどう?
休んでも良かったのに」
「いえ、仕事ですから。今日も、
よろしくお願いします。」

「あっそうだった。今日は、藤倉と
食事の約束してるの。悪いけど
先に帰ってくれる。」

「わかりました。」
「あっ、それと、翼には、あなたじゃ
釣り合わないわ。立場をわきまえた方が
よろしくてよ。」
「済みません。」返す言葉もなかった。
店頭に出れば、
沢山のお客様。
第二弾として
グロスをつけたものを販売する事に
なり、
評判も良く、売り上げは、さらに
伸びた。

軽くランチを取り、午後からは、
自社と百貨店を行き来して
商品の納入を済ませ、
時間は、5時。
隅の自販機で
コーヒーを買い
ベンチに座った。
少し苦いコーヒーは、
喉を通し、
「ふぅー。終わった。」
エレベーターから
降りる翼と美山さん。
ベッタリと寄り添い、
「翼…。ねぇ、行きましょ。」
甘ったるい言葉。
「あー、わかった。部下に連絡してくる
から、駐車場で」
「ええ、待ってるわ。」
あんな姿、見たくない。

私の横を通り過ぎる女性社員は、
「美山さんって、うちの会社の専務が
お父さんらしいわよ。それにしても
あの有名なイケメンにご執心なんて。」
「まぁ、綺麗だから、仕方ないけど、
あの性格は…。ねぇ〜〜。」
「あの、藤倉さんって…確か、
コスメブランドQueenの御曹司って噂
知ってる??」
「うそ!そうなの?じゃ、結婚なんてなれば、ねぇ〜〜。」

「嘘…。御曹司…。そうか。私とは
到底、釣り合ってない…。」

恋なんて…しなきゃよかった。
ほら、また、こんな思いをする。
私は…
もう…誰も好きになれない。
傷つく事から
逃げたい。
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