ノラへの伝言
そういえば今日りこは、はしゃぎながらも楽しそうな家族連れを見て悲しそうな顔を一瞬したのを俺は見逃さなかった。 俺も今はおふくろが死んで片親になったけど小さい時から両親の愛情を、たくさんもらった。そのことを思うとりこが可哀相で切なくて辛くなった。 遊園地なんて家族とも友達とも何度もきた。 なのにりこは初めてなんて。 「誠也・・・泣いてるの?」 俺の目からとめどなく涙が流れた。とめようとしても無駄だった。こんなに泣いたのはおふくろが死んで以来だった。 「なんで誠也が泣くの・・・」そういってりこは抱きしめてくれた。 りこから甘いいいにおいがした。 抱きしめられながら観覧車の1周が終わった。 「せっかくの観覧車だったのに景色見れなかったね。ごめんね。」りこは申し訳なさそうに言った。俺はやっと泣きやんで観覧車を降りた。外は夕暮れ、閉園時間がせまっていた。