真実の愛のカケラ
「よーく見てよ!
可愛いでしょ?」


柚希が欲しがっているのはチンアナゴがぶら下がったボールペン。
これなら会社でも使えるでしょ?と言うが、冗談じゃない。


「見れば見るほどそいつの可愛さがわかんねーよ。

水族館に来たんだからこっちだろ」


俺が選んだのはイルカのキーホルダー。
これとそれなら比べるまでもなくこっち。


「えー?
普通じゃん!」


普通で何が悪い!
これなら携帯にでも付けられるけど、チンアナゴはどうすればいいんだよ。
会社になんか連れて行けないからな、それ!


お互いに一歩も引くことはない。


すると、柚希が卑怯な手を使ってきた。


「これ可愛いよねー」


なんと柚希の隣でチンアナゴコーナーを見ていた5歳くらいの小さな女の子に声をかけ、味方につけようとしている。


「うん。
チンアナゴがこの水族館で1番人気なんだよ」


「へぇ、そうなんだ」


ニコニコと女の子と話しつつ、どや顔をこちらに向けてくる。


すると、女の子もこちらに目を向ける。


「あのお兄ちゃん何にもわかってないんだよ」


チビッコを味方につけたのをいいことに、かなり強気な態度をとってくるじゃねーか。
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