真実の愛のカケラ
「拓哉が彼女を紹介してくれる日がくるなんてなぁ」


「うるせぇ。

俺からしたら、直樹が板前やってることが未だに信じられない」


高校生の頃は、俺以上にいい加減な奴だった。
勉強も女関係も。


結果的に見れば俺と同じかもしれないが、直樹は自ら女性を誘う。
それにのってしまい、泣かされた女性は数知れず。
直樹から行ってる分たちが悪い。


そんな男が板前を目指すなんて言い出したときは、笑い飛ばしてしまった。
だが、今では格好も様になっている。


「そろそろ信じろよ。
腕もあがってんだから。
ほら、食ってみろ」


そう言って出された握りを口に運ぶ。


「うん、悪くない」


「おいしー!」


柚希も目を細めて頬を抑えている。
腕をあげたというのは確からしい。


いつか、直樹は日本食界を、俺はフランス料理界を賑わせていこうと語り合ったことがある。
直樹はそれに向かって着実に進んでいる。
俺もうかうかしていられない。
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