真実の愛のカケラ
「柚希さんは副社長と一緒に仕事してたんですよね?
どんな人でしたか?」


「そうだね…。
仕事に対して凄く熱心で、真っ直ぐな人かな。

副社長になるのも、能見さんの実力あってのことだと思う」


「すごい人なんですね」


「だからこそ厳しかったりもするんだけどね」


「そんなこと言ったって、結局は親の七光りだろ?

28で副社長なんて普通考えられねーって。
さ、どんな奴かじっくり見定めてやろうじゃねーの」


「妬んでるんですか?
ちっちゃい男だな」


美和の棘のある言葉に反論しようとする福井だったけど、ホール内の照明が落とされた。


…拓哉だ。


多くの人を前に堂々と壇上を歩いている。
さすがとしか言いようがない。


「副社長となりました、能見拓哉といいます」


たった一言。
たった一言そうあいさつをしただけで、拓哉から放たれるオーラでホール内の雰囲気は一変する。


すごい…。


会社の役員の方々やレストランの支配人方など、とにかくお偉いさんが多いこの場で挨拶なんて、できるのかな?なんて心配したけど…。
そんな心配は必要なかったらしい。


私の座る位置からは遠くてはっきりとは見えないけど、声からは緊張など一切感じられない。
< 121 / 240 >

この作品をシェア

pagetop