真実の愛のカケラ
オフィスは私の気持ちとは正反対にどんよりと押し潰されそうなくらい重い空気が立ち込めている。


そんな空気を発している犯人はこの中で1番若く、クリスマスというワードに敏感な彼女。


「また今年もやってきますよ。
クリスマスという名の地獄が…。

恋人たちの聖夜に働かされる私たちってなんなんですか?
それで夜遅くに1人で帰ってたら、可哀想な目で見られるんですよ?
なんていう仕打ち…」


美和がやさぐれている…。
そういえば去年の今ごろもこんな感じだったな。
手が回らなくなる仕事の忙しさと、外の幸せ振り撒く人々によってイライラがピークに達しようとしている。


「そんなバカップルのお陰でここは儲かってんだから文句言うな。

それに、24日空いてたって何も予定入んないだろ?
1人家で幸せなカップルを呪うよりも、仕事してる方が気が紛れると思うけど」


「福井さん、今なんて言いました?
首絞めていいですか?
かるーく絞めるんで」


うまくフォローしたつもりかもしれないけど、福井を見る美和は笑っているようで目がマジだ。


「バカか、やめろよ!
軽くでも死ぬだろーが!」


ぎゃーぎゃー言いながらも、やっぱりこの2人は仲が良い。
見てて楽しいし。


というか、これで美和は気分転換をできてるんだろうし、結果的に福井ってすごい奴だ。
なんて、同僚に感心できるほど今の私には心の余裕がある。
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