真実の愛のカケラ
直接対決
今日も笑顔を張り付けて、出社してくる社員や会社を訪れる人々を出迎える。


あの写真の女を見つけてからというもの、注意深く観察してるけど、副社長と2人でいるところなど全く見かけない。


わかったことといえば、奇妙な物体がぶら下がったボールペンをいつも胸ポケットに入れているということと、ああ見えてなかなか仕事ができる人らしいということくらい。
数ヵ月前に新店舗がオープンし、大盛況となっているが、その企画立案に副社長と共に携わったらしい。


おそらく、副社長との接点はそこだろう。
一緒に仕事をしたとなれば、共有する時間も多いし距離が縮まるのも頷ける。
でも言ってしまえばそれだけ。
仕事なんだから嫌でも顔を合わせなきゃならなくて、副社長が妙な錯覚を起こしていたとしてもおかしくない。
好きかもしれない、なんて間違った思考に陥ってもおかしくない。
ここは若い女性社員が少ないんだから、普通の女がよく見えるなんてマジックがあると度々噂される。


あの女だって、それをわかった上でチャンスとばかりに近づいたんだろう。
ふん、上手くいってるのは今のうちだけ。
もうすぐ私が奪ってやるんだから。
< 162 / 240 >

この作品をシェア

pagetop