真実の愛のカケラ
「ど…どうしても、別れないといけませんか?」


会社を辞めるとかどうこうよりも、私はそこに食らいつきたい。
拓哉と別れるなんて、そんな簡単には了承できない。


「拓哉はいずれこの会社を背負って立つ存在じゃ。
これだけの大きな会社となれば、妻の役割も大きくなる。
もしも会社に何かあったとき、君に何ができる?
せいぜい励ますくらいじゃろ。

しかし、わしが薦める相手ならそれなりの協力ができるじゃろ。
家柄が良いからの。


君が側にいたのでは、拓哉の重荷になりかねないじゃろ?
今は楽しくてもいずれそのことに気づく時がくる。
それが少し早まっただけじゃ。


拓哉の為を思って身を引いてくれんかの。
2日後には見合いをすることも決まっておる」


優しいような、お願いのような会長命令に、私は黙ってうつむいたまま顔を上げられなかった。
どの言葉も心をえぐるように突き刺してきた。


「年末まで休みをやる。
今後どうするか考えてみてくれ」


「…はい」


会長の言う今後どうするかっていうのは、拓哉とのことじゃない。
拓哉とは別れた上で、会社を続けるかどうかってことだろう。
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