真実の愛のカケラ
だがそんな変化は、祖父さんの前では何の効力も発揮しない。


「何を言っておる。
一般家庭に育って懸命に暮らしている女に情でも移ったか?

よいか?
いずれこの会社のトップに立つという自覚を持て。
身内にも会社の者にも、外部の者にも舐められることがあってはならん。
せめて育った環境が似ている相手を選べ」


俺の言いたいことが何も伝わらない。
自分の思い通りに動かすことしか考えてないらしい。


「なんと言われようと…」


「宮野さんは物分かりの良い人じゃったぞ。

お前の将来を考えてくれているようじゃ。
別れる決心がついているんじゃないかの」


…なんだと?


この祖父さんのことだ。
柚希に対しても自分の要求だけを押し通すように話したに違いない。


「さっさとけじめをつけることじゃな。
明後日には見合いの場を設けておる。
文句無しの相応しい相手じゃ」


「そんなのに行ってる暇なんかない」


少し前の自分なら有り得ない態度を今とっている。
能見家で絶対的な力を持つ祖父さんに対して、こんな反抗的な言い方をするなんて1度もなかった。


いつもは渋々従うか、断るにしてももう少し柔らかく断っていた。
でも今はそのどちらも選べない。
俺の大切な人が傷つけられているんだから。
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