真実の愛のカケラ
切った瞬間、その携帯が鳴り出した。
しかし相手は期待した人物からではなく、その同僚から。


「副社長ですか?

今日宮野、休みってなってるんですけど、休みなんてとってなかったですよね?
昨日のことといい、何かあったんですか?」


今朝、会社に戻って慌てて柚希を有給扱いにしたが、さすがに親しい人には気づかれるか。


「色々あって、宮野さんの行方がわからなくなった。

なぁ福井、どこか心当たりはないか?」


「いなくなった…?

あいつ、家以外に行く場所なんてあるんですか?
菊地もすごい心配してたんで、菊地の家にも行ってないだろうし…」


だよな。
俺もアパート以外に柚希のいそうな場所なんて思い付かないんだよ。


「そうか。
何かわかったら教えてくれ」


「わかりました」


それから家でじっとしていることもできなくて、ラフな格好に着替えてまたアパートに出向いた。


…予想はしていたが部屋に柚希おらず、さすがに心配になってくる。
今日こそは帰ってくるかもしれない。
そう考えつつ、またこの寒空のした一夜を過ごしてしまった。
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