真実の愛のカケラ
「拓哉」


「…なんで父さんまで」


出口に向かっていると父さんに呼び止められた。
まさかここに来ているなんて思わなかったが、祖父さんが呼んだのか?


「拓哉をここの外に出す訳にはいかないんだ。

結果的に断るのは仕方ないが、今回の見合いだけは受けてくれ」


出た。
今回の見合い相手はよっぽどうちの会社に利益をもたらしてくれるらしい。
でも俺にとって今、優先すべきことは会社の利益ではない。


父さんの横を通りすぎようとしたとき、俺は目の前の光景に足を止めた。


「…正気かよ」


「最終手段だ」


出入り口や窓、その他料亭の外に繋がる通路全てに黒服の男たちが立っている。
…ここまですんのか、あのじじいは。


くっそ。
父さんも父さんだ。
何が、今回の見合いだけは受けてくれだよ。
こんなもん受けたら最後、結婚まで話を進められるに決まってるだろ。


なんとかしないといけないけど…。
この状況をなんとかできんのか?
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