真実の愛のカケラ
そういえば拓哉と最後に会話したのってどんな内容だったっけ…?
わかんないや。

私、拓哉に柚希って呼ばれるの好きだったなぁ…。


今でも目を閉じたら聞こえてきそう。
まるでアパートの部屋にいる時みたいに。


「柚希…?」


ほんと、リアルに聞こえてしまう。
ちょっとヤバイかも。


「柚希だろ?
…やっと見つけた」


……。


…ん?


そんなはずはないと思いながらも、ベランダから下を覗く。


…嘘でしょ。
うっすらと外灯が照らす道に、スーツ姿でその人はいた。
会いたいと願ってはいけないとわかりながらも、願ってしまっていた相手。
どんなに心から追い出そうとしても、全然出ていってくれない人。


驚きすぎて目が離せない。


「拓哉…」


どうしてここにいるの?
お見合いは?
私たち会っちゃいけないんだよ。
こんなことして、会長は黙ってないよ。


言いたいことはいろいろあった。
そんなたくさんの言葉の中で1番に言いたかったのは、会いたかった、ただそれだけ。
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