真実の愛のカケラ
でもそんなの口に出しちゃいけない。
だって、拓哉がここに来た目的がわからない。
もしかしたら、私との関係にはっきりとけじめをつけに来たのかも。


不安で何も言えなくなる。


「どれだけ心配したと思ってんだ。
呑気に梅酒なんか飲みやがって…」


溜め息混じりに呆れた声をかけられる。

あ…。
梅酒の存在忘れてた。
慌てて隠すももう遅い。


「い、いいでしょ」


心配、してくれてたんだ。
それに少しだけ嬉しくなる私は単純だ。


こうやってベランダの下から声を掛けられていると、付き合いたての頃のように錯覚する。
バイトから帰ってきた拓哉をお疲れ様、なんて言って出迎えて。
そんな日々が懐かしいような、でもつい最近のことのようにも感じる。
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