真実の愛のカケラ
「24年だ。
24年間、柚希の父親をやってきたんだ。

お前なんかよりもこいつのことはよくわかる」


「…はい」


そこは張り合うべき所じゃない。
勝ち負けとかいう問題ではないからな。


「何も言わなくても、どういう調子かなのかくらい見ればわかる。
昨日帰ってきた時はどん底にいるようだった。

しかし、不幸にしているようだが不幸になりきれていない。
どこかに希望でも見ているみたいだった」


どん底か…。
改めて自分のせいで柚希を苦しめてしまったことを痛感する。


「それが今はこの表情だろ?
昨日の顔が嘘のようだ」


全員の視線が柚希に集まると、照れたように顔を下に向けた。


昨日の柚希がどんな表情だったのかは見てないけど、それはいかなる理由があれ俺のせいだ。
今笑っていられるからっていいってことにはならない。


「昨日…」


聞いてもらえるかはわからないがまずは謝罪を、と思った。
しかし、酔っぱらった柚希の父親にはまったく聞こえていない。
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